愛の星、金星と金星の宿る星座の物語・その1～愛と魅惑の女神アフロディーテ～

　愛、芸術、音楽を司る金星を知ることは、あなたの本能的な美的嗜好を探ることでもあります。あなたの心を揺さぶる形や色、そして憧れる人物や姿形はどんなものなのでしょうか？

　金星はロマンチストのための惑星です。「ヴィーナス」という英語名からは神秘的で官能的なイメージを受けますが、実のところローマ人がヴィーナスと呼ぶずっと前からヴィーナスは魅惑のシンボルでした。
　バビロニア人は彼女を豊穣の女神イシュタルと呼びました。シュメール人は雷の女イナンナと呼びました。エジプト人にとって彼女は魅惑の女神イシスで、ギリシャ人にとってのアフロディーテは女性的魅力の究極の象徴であり、キューピッドの母でもありました。

　もしあなたが男性なら、金星星座はあなたの理想の女性を表しています。アフロディーテは多くの変装をします。あなたの心をとらえる理想の女性は、どんな“変装”でもってあなたの心をかき乱すのでしょうか？ 　あなたが女性なら、金星星座は、あなたが女性的な魅力を発揮したときにどんな人に変身するかを示しています。正直なところ、ホロスコープで恋愛の好みを読み取るとき、占星術師は皆、女性の心理がとても複雑でつかみにくいものだと感じています。

　アフロディーテは究極の自由を得ている女性でした。彼女は誰のものでもなく、かつ出逢ったすべての男性の心に深く強い欲望の精神を呼び覚ましました。
　彼女は、機知に富み知的なヘルメス、無口でたくましいアドーニス、尊大で力強いゼウスなど、さまざまなタイプの神々と情熱的で実り豊かな恋をしました。そればかりか、彼女には寛容な夫もいました。飄々（ひょうひょう）としていながらも実は苛立ちやすい、傷だらけの職人ヘーパイストスです。

　――ここまでを読んで、アフロディーテについてあなたがなんらかの判断を下したいと思っているのだとしても、それは少し忘れてください。私たちがここで扱っているのは、象徴的な女神であって、実在の人間ではありません。もっともアフロディーテは、いつか彼女についての本を書きたいと思ってしまうくらい魅惑的ですがね！

　とにかくここでの目的は、アフロディーテすなわち金星には、あらゆるタイプの男性にとっての魅力的な女性のイメージが反映されている、ということです。男性の金星星座は、あなたが理想の女性の前でどう振る舞うか――ヘルメス、アドーニス、ゼウス、ヘーパイストスらのいずれのタイプになるのか――を教えてくれます。
　ただし、だからといって「女性の金星星座は、これら4人の象徴的な神々のうちのどの神に惹かれやすいかを示す」というような単純な話にはなりません。すべての女性の心には理想の男性像がありますが、占星術を使ってそれを特定するには、女性の金星星座ではなく、火星星座を見る必要があります。

　金星星座について考えている今の時点では、すべての女性がアフロディーテの精神をどこかに持っていて、その精神は永遠に自由であるということを覚えておいてください。女性たちは、そのときどきの気分に応じて4つのタイプすべてを選び取る権利を有しています。

　男性のホロスコープでは、金星星座は彼の理想的な女性像を表しています。つまり、ホロスコープの持ち主たる彼は、アフロディーテの変身のうちどの面に惹かれ、どういうふうに関わりを持ちたいのかということです。
　一方、女性のホロスコープにおいて金星星座は、彼女がリラックスし、安心し、官能的な自信に満ち、自分は魅力的だと感じられるあり方を示しています。人生においてどのような役割を果たすと、最高に自由で女性らしい気分になれるかがわかるのです。

　ところで、同じ金星星座のふたりは相性がいいのでしょうか？　このあと一つひとつの金星星座について、女性と男性の場合それぞれを説明していきますが、仮にその二つが一致しているように見えたとしても安直には受け取らないでください。それは「相性がピッタリ」というよりも「パートナーシップの可能性」を探るポイントの一つに過ぎません。