タロットカードの歴史

　タロット――その言葉にはそれだけで魔法の響きがあります。タロットの絵柄は誰にとっても心のなかの神秘の琴線に触れるものであり、一目でもこの78枚の古代絵巻をのぞいたなら、どんな現実的な人であっても、自分にも「本当に古い部分」が存在しているのだと気づかされます。
　タロットカードは、日常的な自己を超え、直観そのものに触れる手段を私たちにもたらします。カードから得る視覚的な刺激に対してわき上がる深い直観的な反応！　それだけで私たちは自分の潜在意識と対話する方法をハッキリと学べるのです。そんなバカな？　試しにちょっとタロットを学んでみてください。すぐに内面的な理解が深まっていくのを感じるはずです。その気づきこそ魔法であり、毎日の暮らしのなかに存在する動機や思惑をなぜだかクッキリとさせてくれるものです。これをタロットの持つ力と言わずしてどうしましょう！

　実は、タロットカードの歴史そのものが謎に包まれています。22枚の絵札、つまり「大アルカナ」は、世界最古の書物のページに由来すると言われています。魔術と象形文字の黄金時代、エジプト王オシリスの顧問、ヘルメス・トリスメギストスによって作られたとする説です。
　他にも、中国から伝わったとする説、ジプシー（編注：原文ママ）たちがインドから持ちこんだという説もあります。ヘブライのカバラ思想と頻繁に関連づけられていることから、大アルカナとヘブライ文字とが対になっていると指摘する人たちもいます。

　さらに、641年にアレクサンドリアが破壊されたあと、フェズの都市が世界の精神的中心地となり、多くの言語を話すさまざまな賢者や予言者たちが集まった点に注目した説も興味深い起源説の一つです。賢者や予言者たちは共通の言語を持たなかったため、普遍的な言語の創造を試み、絵による書物の形で具現化した――それがタロットの源流だというものです。

　いずれにしても、タロットカードは依然として不可解な存在です。現在、最古のタロットは1390年のものだとされていますが、そもそもタロットについては歴史的な説明や根拠が必要なのかというとそれも疑問です。カードの象徴性が引き起こす深い心理的反応を解き明かすのに、そうした「権威」の力を借りたくなる気持ちもわかりますが、私はカードは魔法として受け入れるのが一番いいように思っています。だってすべての魔法は時代を超越しますからね、タロットと同じく。